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変電社日記

転がっているデジタルアーカイブスをいろいろdiggin'して電子「古書」としてサルベージしたら面白いんじゃないかと思っている人の準備会

「日本歓楽郷案内」酒井潔

近代デジタルライブラリー レビュー

「日本歓楽郷案内」酒井潔

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「日本歓楽郷案内」(頁数207)

シリーズ名:談奇群書

著者:酒井潔

発行日:昭和6年(1931)

出版社:竹酔書房

国立国会図書館デジタル化資料「近代デジタルライブラリー」

昨晩に続き「自腹で集めた夜遊び情報」になってますが、筆者の酒井潔と言うと今年なぜか「エロエロ草子」でWEBブレイクしてしまっていて、知ってる方も多いかもしれません。ただネタ消費されてしまっただけで中身を読んでいる人が少ないようで、酒井潔記事を探しても思いの他見当たらないので、ならば僕の方で酒井潔シリーズとしてこの記事に続けて次回「異国風景浮世オン・パレード」を紹介したいと思っています。

だいたいにおいて僕らが考える「エロ」というものと1920-30年代の「エロ」というものとの違いに「このレベルがエロだったの!」みたいな現在と比較した際の刺激の強弱における格差で笑う人もいますが(現代に胡座かいてるだけの姿勢ですが)、おそらくそれよりも重要な格差はかつて「エロ」も一種のダンディズムの表現でもあったということが酒井潔を読むと何だかよくわかります。

また酒井潔の本がとかく装丁へのこだわりが伺え、このあいだ出た『idea』第354号「日本オルタナ出版史 1923-1945 ほんとうに美しい本」特集でも「巴里上海歓楽郷案内」「愛の魔術」等が紹介されておりましたが、こちら「日本歓楽郷案内」装丁もカラー写真でお見せしたいくらい美しく、大阪の天牛書店という古書屋さんが過去の入手記事でカラー写真(向かって右の三番目の作品)を上げていたので参考ください。都市の夜に瞬くネオンサインを象ったとても「粋」な感じですね。

「日本歓楽郷案内」が前記事の小松直人「Café jokyû no uraomote」と違うのは、特に「カフェ」にこだわってないという点と、あとは著者酒井潔のパーソナリティに負う所ですが、エピキュリアンであり都市遊歩者であった酒井のモジ(モダンジイサンの略)としての面目躍如たる筆が各所に冴えており、例えばビューワ頁数の60頁の新宿への都市観察者の眼差しは一級のエッセイであります。

そういった眼差しが「jyokyu」小松にはなく、其の意味では素人向けガイドブック制作者であり社会告発的な何かを抱えていましたが、かたや酒井はバチュラー兼都市生活者へ向けたライフスタイル指南としての居直りがある。あの歓楽街あの歓楽街と遊歩する酒井の影を追いながら馥郁たる夜の都市を徘徊しているような気分になります。

しかし酒井潔の情報はWebでも極端に少なく現在wikipediaもありません。戦前の「悪魔學大全」「降霊魔術」等を叙していた根っからのディレッタントであり、なぜかそちらの方面の著書が学研M文庫で2003年に復刻されていたりします。

悪魔学大全〈1〉 (学研M文庫)

悪魔学大全〈1〉 (学研M文庫)

悪魔学大全〈2〉 (学研M文庫)

悪魔学大全〈2〉 (学研M文庫)

以下上記Amazonサイトから引用しておきます

本名、酒井精一。明治28年、名古屋生まれ。大正期に魔術、秘薬、性愛関連の膨大な文献を収集し、自らの個人誌「談奇」をはじめ、昭和初期のさまざまな風俗研究誌にその研究成果を発表。梅原北明との交流でも知られる。昭和27年、京都にて死去

梅原北明あたりもおいおい攻め込みたいと思っておりますが、あんまりこっち領域ばかりでもしょうがないので、いろいろアーカイブスを探索中ですので少々お待ちくださいませ。

また今作は近代デジタルライブラリーもう一作収蔵されています。版の相違はありますが挿絵の位置の若干の違いの他、検閲のせいか一部文字が白抜きされていたりもします。比較した所それは男が女給に対してズロースなんか脱いでしまえとからかっているシーンにおける「ズロース」の部分でした。そういった「抜き」がなく読みたい方は検索結果の二番目にきているこちらでお読みください。

http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1460597

僕が検閲ありの方で、こちらを選ばなかったのは文字の滲み等の総合評価で上が読みやすいだろうという判断です。

 といったわけで今回もとても面白かったので、評価

★★★★★(星5つ)

です!このままいくと★5つばかりなりそうで怖い!

by 社主代理:持田泰