「Café jokyû no uraomote」 小松直人
「Café jokyû no uraomote(カフェ・女給の裏おもて)」 小松直人
「Café jokyû no uraomote」(頁数105)
シリーズ名:エログロ叢書
著者:小松直人
発行日:昭和6年(1931)
出版社:二松堂
今回紹介しますは「カフェ」といってもと昨今蔓延っているゆるふわガールのシャレオツまったり系ではなく、戦前日本で関東大震災後の大正期から昭和にかけて雨後の筍のようにわらわらと現れ出た「カフェ」という都市風俗です。
大正から昭和にかけて「飲食を提供しつつサービスを主体にした店」と、「あくまでコーヒーや軽食を主体とした店」への分化が進む。前者はそのまま「カフェー」または「特殊喫茶」「特殊飲食店」としてバーやキャバレーのような形で次第に風俗的意味合いを持つようになった。
なので現代語訳してしまえば「キャバクラ・キャバ嬢の裏おもて」なわけですが、その当時の東京風俗が非常に赤裸裸に綴られております。
著者は銀座から始まり人形町・上野・浅草・深川・新宿・神楽坂・渋谷・池袋のみならず東中野・高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪等の中央線沿線、はては大阪・京都・神戸のカフェまで脚を伸ばして、あそこの○○子が愛嬌がある○○は近代的美人だここのカクテルは飲んでおいて損はない等。なんでしょう。つまり記者が自腹で集めた夜遊び情報です
他にもチップの払い方や女給に嫌われないコツとか、つまりは当時の夜遊びガイドブックであったのだろうと認識し、昔かっら男ってやつはと感慨ひとしおであります
また当時の著名文士らの所行もここかしこに織り交ぜており、あそこは某文壇グループの溜まり場だ、ここで某連中が朝までどんちゃん騒ぎしてる、などを書いてるだけでなく「左翼作家でモダンボーイの林房雄とできていたとかいないとか噂」とか「青野は評判がしごくよろしく。とうとう××子をものにして、これを×××せてしまった」「女主人ミサオと井伏との評判はあまりにも有名」なんてゴシップを平気で暴露していたりして文壇裏面史としても笑えます。当時はおおらかだったんでしょう。
後半は女給の実態ドキュメントであり、女給ランクによる収入比率から人気女給らの本音トークや、大阪式カフェの東京進出でエログロ隆盛になっての「枕」の実情や、女給間での熾烈な「ナンバーワン」争い等々、1930年代の「嬢王」的裏面レポートも満載。「女給の十誡」なんて今でもキャバ嬢に通用しておかしくない十の教えであります。よって単なる男の夜遊びガイドだけでは終わってません。「エログロ叢書」というシリーズ名だけで侮るなかれです。
分量は見開きで100頁強なので本で換算すると200頁くらいです。ふりがな付きの旧字体なので読み辛くはありません。
といったわけでとても面白かったので、初回から評価は
★★★★★(星5つ)
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